秋春シーズン制移行タウンミーテング 説明要旨

目次

1. シーズン移行を語る前に
2. 世界に後れをとっているJリーグ
3. Jリーグ・日本サッカーの目指す姿
4. まとめ(1~3について)
5. シーズン移行を検討する上でのフィジカルデータの追加
6. シーズン移行に関する各クラブの監督意見
7. シーズン移行後の財務状態の変化
8. シーズン移行検討の積み残し課題

1.シーズン移行を語る前に

第2回タウンミーティングは、第1回目からの検討状況について、報告する場としている。そうした中で最も大きな追加論点として、シーズン移行は、今後、Jリーグが成長する上での重要な影響を及ぼす一方策として位置づけられたことである。その背景にあるのは、この30年間でクラブ経営規模の観点から海外主要リーグに大きく水を開けられた現実を踏まえてのことである。今回は、その事実をつまびらかにしつつ、経営面・サッカー面で世界に追いつくことを通じて、全クラブの経営サイズをアップさせていくシナリオを模索し始めたということを冒頭でお伝えしたい。

2.世界に後れをとっているJリーグ

欧州5大リーグには、DAZNと比較にならない放映権料がクラブに配分されていて、これが収入源となっており、当該リーグとJリーグのクラブ経営規模に大きな差が生じている。このままでは優れた日本人選手の海外流出に歯止めがかからないこと、また、海外からのビッグネーム招聘もおぼつかないことから、Jリーグが衰退しかねないと危惧している。そうした危機感から「Jリーグ・日本サッカーの目指す姿」を明確にし、もってJリーグトップクラブがACLで優勝、クラブW杯出場で多額の賞金を手にし、海外におけるJリーグの価値を高めることで、放映権料のアップにつなげ、リーグからの配分金という形で全クラブの潤いが増すプロセスを辿ることを模索する時期が来ている。こうした背景を踏まえ、秋春シーズン制移行を論ずべきとの見方が強まった。

3.Jリーグ・日本サッカーの目指す姿

この状況を打破するためには、これまでの各クラブによる企業努力「入場料・広告協賛・用品販売」に加えて、上記グラフが示すように、海外主要リーグに経営規模面で大きな差を生み出している放映権料や移籍金による収益増を目指し、Jリーグ全体としてのスケールアップを図ることでさらに魅力あるJリーグへと変わっていかなければならない。そうしたことを踏まえ、今後は、以下4つの戦略を柱として、放映権料と移籍金獲得に力を入れることで、トップクラブは100~200億円に収益を拡大させ、また、増額された放映権料を効果的に配分金へ落とし込むことによって、その他のクラブも1.2~1.5倍まで収益を引き上げることを目標に掲げている。
① 海外からの収益拡大
② 世界と戦うフットボール
③ 競争環境の構築
④ 各地域での圧倒的な露出

① 海外からの収益拡大
世界のクラブの収益は、トップのマンチェスターシティが1,000億円規模で、トップ20の平均は630億円、21~41位が平均230億円、41~60位が平均130億円となっている。クラブの強さは決して金額の多寡だけで決まるものではないが、Jリーグのトップクラブがアジアで勝ち続け、世界と渡り合うためには、収益拡大は避けて通れないと思料する。現在、Jリーグトップの浦和レッズでも100億円に届かない状態であるが、当面は100億円を目指しつつも、21~41位の200億円を目標とするためには、ACL優勝やクラブW杯出場で恒常的に賞金を獲得し、Jリーグのクラブとしてナショナルコンテンツとなっていくことが必要である。それによって、欧州を中心としたブロードキャスティング会社からJリーグの放映権料アップの可能性が高まり、結果として、下位カテゴリーを含めた全クラブへの配分金も増えるという道筋はJリーグ全体に漂う閉塞感を払拭させる一手と捉えている。

② 世界と戦うフットボール
今や日本代表の主流は海外組となっており、このまま何も手を打たなければ、欧州CLや5大リーグで活躍する日本人選手はさらに増えていくと考える。先日行われたバスケットボールのW杯では、日本代表として活躍した選手がBリーグに戻ってプレーをすることで、リーグの盛り上げに大きく貢献している。一方で、サッカーは代表選手がほとんど海外でプレーしているため、盛り上がりに繋がっていない。Jリーグにいても世界と戦える環境を構築し、日本代表により多くの選手をJリーグから輩出するためには、2023シーズンから秋春制に移行したACLで優勝すること、そこで得た2025シーズンから32クラブ制に拡大されるクラブW杯への出場を通じて世界のトップクラブと真剣勝負ができるというシナリオがなくてはならない。

③ 競争環境の構築
2024シーズンからJリーグの全カテゴリーが20クラブ制となり、さらにJ2とJ3については、3位から6位までのプレーオフが導入されるため、上位カテゴリーに3クラブが昇格する。これまでJ2への昇格枠は2クラブしかなかったが、本レギュレーションの適用により、全カテゴリーに渡り、より競争環境が強まったと言える。加えて、6位までのクラブに昇格のチャンスが与えられるということは、降格しても戻れる可能性が増すため、競争を促す新たなレギュレーションに大きな期待を寄せている。
また、YBCルヴァンカップは、Jリーグ全60クラブが参加するノックアウト方式に変更となり、原則、下位カテゴリーのホームで開催されるため、競争環境が強まるばかりでなく、集客に苦しむ地方クラブにとって起爆剤となるような大会を狙いとしている。

④ 各地域での圧倒的な露出
ここ富山では、サッカー情報番組「KICK OFF TOYAMA」が放送されているが、これは各クラブの収益拡大を狙いとしてテレビを中心に露出を増やすJリーグの施策で、全国各地で展開されている。カターレ富山としては、エントリー層やライト層にスタジアムへ足を運んでもらえるよう、これをフックに認知拡大を図っている。

4.まとめ(1~3について)

世界の主要リーグから大きく後れを取ったJリーグが、上述した4つの方策で「多くの日本代表選手の在籍、海外からのビッグネームの招聘、各カテゴリーの競争環境の構築、地域クラブの発展支援」を目指すことで、世界の主要リーグをキャッチアップしていかなければならない。このプロセスを通じて生まれるナショナルコンテンツにたるビッグクラブの牽引により、飛躍的な経営サイズアップにつながる放映権料の大幅な増額を図っていく。その実現のために、昨今、クラブに焦点を当てた世界大会(ACL、クラブW杯)での躍進に繋がる秋春制へのシーズン移行は重要な一方策と言える。

5.シーズン移行を検討する上でのフィジカルデータの追加

前回7月のタウンミーティングで説明した走行距離と高強度走行距離(時速21km以上)について、欧州5大リーグとの比較検証データが追加された。黒い折れ線のJリーグカーブは、赤くペイントされている6-9月が落ち込む谷型となっているが、青い折れ線の欧州5大リーグはシーズン開幕とともに上昇し、疲労が蓄積される終盤に向かってなだらかな下降曲線を描く山型のカーブとなっている。

 
また、Jリーグから連戦影響についてもデータ提供があり、走行距離と高強度走行距離(時速21km以上)は、いずれも赤くペイントされている6連戦まで距離が落ちていないことが示された。これは、天皇杯でカターレ富山がターンオーバー制を採用したように、フレッシュな選手と入れ替えながら戦うことが出来ているため、連戦影響を受けなかったものと考えられる。

   

6.シーズン移行に関する各クラブの監督意見

60クラブ中、57クラブの監督が参加し、そのうち33名から発言があった。猛暑の中で行われる7-8月の試合は、選手が生命の危険を感じるほど体力の消耗が激しいことから回避してほしいとの意見が大勢を占めていた。一方、連戦については、選手を入れ替えるターンオーバー制で対応できるため、秋春制シーズン移行に関して否定する声は少なかった。また、欧州とシーズンが一致することで、シーズン途中に選手が移籍するケースが少なくなり、チーム編成上のメリットを指摘する意見も多くあがっていた。
シーズンオフとウィンターブレークという2回の中断期となるため、合宿期間が増えることについては、どこのクラブも同じ条件であることから、勝利を目指す立場として強い不満の声はあがっていない。
また、シーズン移行の有無にかかわらず降雪地帯のクラブからは練習環境の改善を求める声があがっていた。当クラブでも、強化部長、監督・コーチングスタッフと議論を行ったが、概ね上述内容に即したものであった。「提案どおりのウィンターブレークを前提に、(秋春制を)やれと言われれば、やる」というスタンスであった。

7.シーズン移行後の財務状態の変化

前回のタウンミーティングで、参加者の方々やメディアの皆さんから心配の声が多く聞かれた経営面(キャッシュフロー)について、2023年度の経営規模と同等という前提条件を置いてシュミレーションをしたところ、ウィンターブレーク中のキャンプ費用が追加となり、キャッシュフローは現行から約▲14百万円悪化する試算結果となった。一方、懸念された入場料収入が途絶えるウィンターブレーク期間中のキャッシュフローは、入場料収入自体が全体収益の10%にも満たないため、大きな資金残高減には至らなかった。また、平日試合が増えることによるチケット収入減も、現行のチケット単価が低いことや入場料収入が全体収益に与えるインパクトが小さいことから、大きなマイナス影響とはならなかった。

8.シーズン移行検討の積み残し課題

秋春シーズン制移行について、10月末に賛成・反対のスタンスをクラブ代表として表明すると伝えているが、増加するキャンプ費用の補填有無やホームゲーム会場(県総)の確保、大学・高校から入団する新卒選手の契約問題といった解決しなければいけない課題が積み残されている。また、シーズン移行の有無にかかわらず、その他の恒久課題として、降雪地帯の富山県は、冬場の公式戦やトレーニング環境の整備、さらにはスタジアムに足を運んでくれた方々に快適な観戦環境を提供するための施設整備が必要と考えている。
ただし、これらの積み残し課題が解決しないから反対するのではなく、シーズン移行がJリーグとして世界と伍して渡り合える経営規模を獲得していく取り組みの一方策として位置づけられるとの認識も含め、トレードオフであることを念頭に置き、さらなる検討を行っていく。